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山声人語 vol.2

▽山は自由だから面白い。 毎日同じ時間に出社し、与えられた役割をこなす日々の仕事では味わえない 魅力が山にはたくさんある。 山に登ったことが無い人にとっては、ただひたすら歩き、しかも命を落とす危険のある山に なぜ好き好んでいくかなんてきっと理解してもらえないだろう。

▽どうして山じゃないと駄目なのかと聞かれると、僕はうまく答えられない。 きっと特定の人を好きなった時、なぜ好きになったのかうまく説明できない のと同じなんだろう。 「そこに山があるからさ」。エベレストを初登頂した登山家がどうして危険な山に登るのか 聞かれた時に答えた有名な言葉だが、彼も同じ気持ちではなかったか。

▽もちろん山の魅力ならいくらでもあげられる。 山のてっぺんに立つために少なくない時間とお金をつかってわざわざ山に登る。 天候によっては雨や雪の中を震えながら山頂を目指す。 山頂から見る景色は、既に誰かがインターネットにアップロードした 写真にて既に見た風景だ。 そう、山の魅力とは山頂に立つ・山頂からの景色を見るといった目的自体ではく そこに至るまでの過程にある。

▽冒頭の「山は自由だから面白い」との僕の想いは、まさに山頂に立つまでの 過程に凝縮されている。 山を登るにあたって、まずはどこの山を登るかを決める。 季節と力量、山に使える気力と時間を考慮し、吟味しいつどの山に登るか決める。 日本には山はいくらでもあるが、そこから好きな山を選ぶ。 山を選んだら次は山行計画を立てる。 ガイドブック片手にどこで休憩しごはんを食べるか、山で一泊するのであれば どこにテントを張るか決めていく。 計画に正解なんてない、山の登り方は登る人の数だけあるのだ。

▽自分の中では完璧な計画を立てたとしても、大雨や突風、雷といった気象条件と なれば計画は大きく狂う。 時には山頂に向かうのを途中で断念し、引き返すこともある。 そうして苦労を重ねがら自分で立てた計画通りに山頂に立てた時、 僕は日常では決して味わえない充実感を得る。 一から自分で計画を立て行動する。失敗も成功も全て自分次第であるといった 自由さが山の一番の魅力なのだ。

▽社会の中で生きていると、そういった自由さはほとんどないのではないか? サラリーマンには協調性が求められる。自分の意思だけでできることなんてほとんど ないだろう。組織としての意思を優先し時には自分の思いに反した行動をとらなければ いけないだろう。 山にむかう時にはそうした社会のしがらみから飛び出して、一個人に戻る。 考えるのは山のことだけだ。 社会性と引き換えに犠牲にしている個人の感性・純粋な気持ちを 取り戻させてくれるのが山である。 そこに僕は大変な魅力を感じる。


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