山声人語 vol.12
▽小さい頃は、もし生まれ変われるとしたら空をとべる鳥になりたかった。反対に退屈そうな植物にはなりたくないなと思ったものである。今回の山行の最中に、久しぶりにもし生まれ変われたらなんて事について考えた。きっかけは蜘蛛と木々。
▽山に積もった雪の上で蜘蛛が静かにのっそり歩いていた。雪の上で一体何をしているのだと不思議で杖でつついてみると動かなくなった。 家に帰り調べてみると蜘蛛は基本卵で冬を越し、成体は冬になると寿命を終えるらしい。 日々命がけで獲物を見つけ子孫を残し、わずか1年で役目を終えて永遠の眠りにつく蜘蛛。シンプルな生き方。
▽一方自分は快適な文明社会に身をおき、時々文明に飽きては、不自由を求めて雪山へ向かう。 頂上にたったころには寒さに震え、もう温泉や暖かい部屋といった普段の生活が恋しくなり一刻も早く日常に戻りたくなる。 そして日常に戻り働いていると、嫌気がさして抜け出したくなる、、、蜘蛛に比べると何とも間抜けな生き方に見えてこないか。
▽間抜けな僕と死んだ蜘蛛を冬枯れで丸裸になった木々が見ている。 何十年、何百年と同じ場所で少しづつ成長し、辺りを見守る木々。 季節の移ろいを身体で感じながら葉っぱで表現し、蜘蛛や鳥といった動物たちの日常をゆったりと見守りながら暮らす木々の日々。 木々に感情があるのかわからないが、何と優雅な生活だろうか。 蜘蛛や木々の生活に少し憧れを感じたことに、自分の成長というか年を経ったことを感じた今日この頃。